訴訟において当事者の代理人となることは、従来、弁護士の独占業務とされ、弁護士資格を有していない者がこれをすることは、弁護士法72条違反として刑事罰の対象となるとされてきました。
これは、訴訟における代理人としての活動の主体は高度の法律知識を有するとともに、高い法曹倫理をわきまえた専門家に限らせるべきであるという価値判断に基づくものと言われています。
しかし、最近になって、当事者からのアクセスの容易さ等にも配慮し、いわゆる司法制度改革の一つとして、司法書士の中で一定の研修を受け認定試験に合格した者に対して、簡易裁判所における訴訟代理権が認められるようになりました。
司法書士は、もともと裁判所に提出する書類の作成を主要な業務の一つとしていたのですが、訴訟代理権がないために、書類を作成した事件においても、法廷には当事者本人が出頭せざるを得ず、法廷でのやり取りや尋問なども、弁護士に依頼していない限りは当事者本人がしなければならなかったのですが、この制度改正により、司法書士が弁護士と同様の活動をすることができるようになったのです。
もっとも、簡易裁判所で扱える民事事件は訴訟の目的の価額が140万円を超えない事件に限られていますから、これを超える価額の事件の場合や、簡易裁判所の判決に対して控訴がされた場合には、その後の訴訟手続を司法書士が代理することはできないため、従前と同様に、訴訟代理は弁護士に依頼することとなります。