民事訴訟手続き(民事裁判手続き)は、個人的な権利や法律関係について争いが生じた場合に、裁判所の公権的な判断によって紛争を解決するための手続きです。
公権的な判断によって紛争を解決しますが、一方では、私的な権利利益についての判断でもあるため、審理手続きにおいて当事者の意思を尊重する仕組みがとられています。
民事訴訟手続きにおける審理のルールは、弁論主義という考え方に支えられています。
弁論主義とは、判決の基礎となる訴訟資料の提出を当事者の権能と責任とするルールのことです。
具体的には、当事者が弁論において主張した事実と提出した証拠のみによる判断となることで、当事者が主張していない事実、提出していない証拠について裁判所は斟酌してはならないということになっています。
例えば、AがBに対して貸金の返済請求をした場合、Bは借りた覚えはないと主張し借り入れの事実を否定する主張のみをしていたとします。
この場合、仮に証拠上、Bが借り入れをしているがその後返済を完了していたという領収書が発見されたとしても、Bが弁済の事実を主張しないまま判決を迎えた場合にはAの勝訴となるのです。
証拠関係から弁済の事実が明らかになったとしても主張がなされていない以上、弁済の事実を裁判所は斟酌することは出来ません。
このようなルールが弁論主義です。
個人的な権利利益を、主張していない事実や提出されていない証拠を裁判所が踏み込んで調べることは妥当ではないという考えにより、弁論主義が採用されているのです。