医療訴訟とは、間違った医療行為によって患者が死亡したり、あるいは後遺障害が生じたなどといった場合に、医療過誤事件として相手の医療機関に損害賠償を求めるものですが、大方は勝訴することが難しいのが現状です。
それは、医療という特別な分野においては裁判でも高い専門性が求められるためで、患者側の勝訴率は約2割と極めて低いものとなっています。まず、医療裁判では弁護士に高度な医学知識が求められますが、医療機関側の過失を立証する立場にある原告の代理人は、診療録を分析するために専門書や医学文献などで勉強しなければなりません。
しかし、一方の医療機関側の代理人は医学文献を入手するのも容易く、また医師からの指導も往々にして受けられるという有利な立場にあります。そして、そのような専門知識のレベルが勝敗に大きな影響を及ぼすこととなり、それに加えて医師は同業者をかばう傾向があるため、原告側が過失を証言してくれる医師を見つけるのは実に困難です。
また、医療裁判では専門医が作成する私的鑑定意見書を提出することになっていますが、原告側に協力してくれる医師がいなければ提訴自体もできなくなってしまいます。
更には、医療訴訟を扱う裁判官は医療事件を専門とする医療集中部に所属している人でも、もともと高い医学知識を持っているというわけではありません。
ですから、高度な医学知識についての理解を求めるのは無理がないとは言い切れず、そういった医学的な問題点を原告側が分かりやすく説明するのは非常に難しいと言えます。
このように医療訴訟にはある種独特の特徴があり、それ相応の覚悟を持って裁判を起こすということになります。