紛争の解決、あるいはそのための手続きを訴訟と言いますが、財産や身分関係など私人間の権利関係についての紛争を規定しているのは民事訴訟である一方、殺人や窃盗、脱税といった特定の人の犯罪を認定したうえで国家と私人の間で問題を問うのが刑事訴訟です。
どちらも訴訟に関与するのは裁判所と当事者ということになりますが、民事裁判と刑事裁判とでは進め方に大きな違いがあります。まず民事訴訟での裁判は原告も被告も私人間ですが、刑事訴訟による裁判では、裁判を起こせるのは国家の代理となる検察官で、被告人側には、検察官に抗するために弁護士への依頼が権利として認められています。
そして、民事裁判では原告と被告の関係は対等で、お互いに主張の正当性を証明するための証拠を提出し合って最終的には裁判所が判断しますが、その場合、当事者同士が納得できればそれでよいので和解勧告が出るケースもあります。
しかし刑事裁判では、国家が被告人に刑罰を科すかどうかを判断する手続きとなるため、検察官の証拠提出により犯罪者の立証が行われ、被告人自身が能動的に無罪を証明したり、または裁判所から和解勧告が出たりするといったことはありません。
また、民事裁判で負けた当事者は裁判所の判断に従うことになりますが、刑事裁判では無罪や懲役及び罰金として刑罰の有無などが言い渡されるようになっています。
このように民事訴訟と刑事訴訟は別のものですが、事件の内容が民事と刑事のどちらの問題にもなる場合があり、当事者間が納得できる真実を是認する民事と客観的な真実を追及する刑事とでは判断が違うので、それぞれの結果が違ってくるケースも多々としてあります。