労使間の関係において対立が極限まで高まった場合、最終的には訴訟によって紛争の解決を図ることとなります。
労働訴訟は通常の財産上の請求権についての訴訟とは異なった特徴を有していると言われ、労働裁判で争われる内容は、労働の提供のあり方や労働者の人格評価に関わることが多いため、労働者側からすれば人格的をかけて争う事件としての性格を持たざるを得ないというのが専門家の分析です。
また、労使関係は非対等な立場で争うとことでもあります。
労働者は訴訟を提起すると、とりわけ解雇を争う事件の場合には、企業外に排除された状態で訴訟を遂行することとなります。
そのため、労働者は給与を得ることができなくなるので、訴訟が長引けば経済的に困窮した状態での訴訟を止む無くされるという面があり、さらに情報についても企業側に多くあるため、労働者側が事故に有利な資料を入手することは困難となるという面があります。
このように、労働訴訟は労働者側が人格をかけて、大変厳しい中で訴訟を進めていかなければならないという非対等な関係で進められる大変いびつな訴訟であるということが出来ます。
しかし、このような非対等な訴訟は労働者の裁判を受ける権利への配慮を欠くものであり、この点は裁判所も認識しています。
そこで、訴訟を対等なものとするため、文書提出命令や立証責任の転換など、様々な民事訴訟のルールを柔軟に適用して対等性を確保しようとしているのです。