昭和60年に実際にあった訴訟事案を例に、行政指導の特徴を考えます。
マンション業者がA市に大規模なマンションの建築確認を申請しましたが、周辺住民はその建設に反対でした。
そこで、住民はA市に陳情を行いました。
A市は、宅地開発指導要綱に基づいて、業者に対し周辺住民の同意を得るまで、建築確認を留保することにしましたので、業者は住民に対して説明会を行いました。
しかし、なかなか住民の同意を取り付けることはできず、業者と住民の交渉は長期間にわたり、最終的には、住民の同意を得て建築確認がおりたのですが、業者は建築確認の留保によって工事着手が遅れ、その間に生じた工事請負代金の増額等の負担をA市に求めました。
業者側は、それらを違法な行政指導によって生じた損失だと主張したわけです。
A市は、マンション建築が法律要件を満たせば、速やかに建築確認しなければなりません。
では、今回の事案のように、建築確認を留保するような行政指導は適切だったのでしょうか。
これに対し裁判所は、「直ちに違法な措置であるとまではいえない」としながらも、「行政指導には応じられないとの意思を明確に表明している場合には、行政指導が行われているとの理由だけで確認処分を留保することは違法であると判決し、行政指導には応じられないとの意思を表明している場合にまでそれを押しつけることは違法であるとの判断を示しました。
つまり、行政指導は自発的な協力を求めるものであるということであり、それが最も大きな特徴です。