死亡退職金または死亡功労金の支給規定を有しない財団法人において、その理事長の死亡に際し、理事会の決定によりその配偶者に支払われた退職金が、受給者個人に支払われたものであることを認めた裁判がありました。
在職中の死亡によって雇用関係が終了した労働者には、通常は死亡退職金が支払われます。
死亡した者が国家公務員の場合には、国家公務員手当法などの法令により受給権者が定められていて、また、民間企業に勤めていた場合には、労働協約や就業規則等により受給権者が定められている場合が多いです。
しかし、そこで受給権者として定められている者の範囲や順位が、民法の定める法定相続のそれと異なること、また、退職金の性質論から、死亡退職金が相続財産に含まれるのか、それとも受給権者の固有の権利となるのかどうかにつき従来は見解が分かれていました。
退職金の性質については、功労報償、生活保障、賃金の3つの性質があります。
一般論として、退職金をいずれか一つの性質で説明することはできませんが、当該死亡退職金がいずれの性質を強く持つかについては、それが何によりどのように定められているかを検討する必要がありました。
民間企業の内部支給規定に基づく場合にも、労働基準法施行規則等を準用するものや、受給権者を遺族と定めるもの、受給権者を相続人と定めるものに大別出来ます。
労働者死亡後の法人の一方的決定による類型では、労働者と会社との契約的構成はとり得ません。