国家は相続という一種の不労所得、つまり一時的な無償の財産取得に累進税率をかけ、相続税による国庫収入の拡大と富の再分配を図っています。
このような、人の死亡にともなう財産の移転にかけられる税金が相続税です。
これは、相続または贈与、または死因贈与によって相続人が取得した財産に課税をすることで、相続による社会的不公正と富の偏在の固定化を是正することが目的となっています。
平成6年1月に法律が改正され、相続人の基礎控除は5000万円に加えて、相続人1人当たり1000万円に引き上げられました。
同時に、税率も最低1割から7割までの範囲で低い税率が適用される範囲が広がりました。
また、配偶者の軽減特例についても、遺産の半分または1億6000万円の高いほうを計算し、その金額まで税金が免除されることとなっています。
財務省は、今後も基礎控除額を引き下げる方向で検討を進めていますが、一方で、自営業や農業経営をしている人への保護が必要になります。
相続財産の分割にともなって、相続財産を組成する経営資産の分散と解体をもたらすことがあり、経営の収益性や経営基盤の弱い中小個人企業や家族的農業経営にとって打撃が大きいのも事実です。
ドイツ式やフランス式の相続法も、相続と家族的自衛経営の細分化の防止を狙ったものです。
中小の個人経営体では、後継者への経営資産の一括承継と他の相続人への公平な補償の元に、共同平等相続と家族経営の維持とを調和する方策の検討が今後の課題になります。