法人や法人代表者、個人事業者などが自己破産を申し立てる際には、不動産を所持していれば原則として裁判所によって破産管財人が選任されることになります。
この場合は、破産者名義の財産の管理処分権は破産管財人に移転し、破産者は自分の名義の不動産でも自由に売却をしたり賃貸したりはできなくなり、破産管財人ができるだけ高く換価して任意売却し、その代金は各債権者に分配されます。
通常、換価される場合は破産管財人が不動産業者へ売り物件として情報提供をし、市場を通じて購入希望者を募りますが、破産管財人が価格を自由に決められるのではなく、査定所や鑑定書に基づいた評価書や売買契約書の案などを書面にまとめて裁判所に提出し、売却許可申請を行う必要があります。
一方、個人破産では換価や分配可能な財産が存在しないケースが殆どで、住宅を所有していたとしても住宅ローンの支払いが残っているといったこともよくあり、このような場合には、裁判所では破産管財人による換価や分配は行わずに破産手続き終了となります。ですから、破産者の持つ財産は自分の意志で自由に管理や処分ができますが、金銭的な価値としては当然ながら低いため、債権者の利益が害されるという恐れはまずないものと考えられます。
そして、こういったケースの売却は一般的な売買契約締結と同じで、購入希望者が決定すれば通常通りの契約や決済ができ、裁判所に事前の許可を得たり事後報告をしたりする必要性はありません。また、購入者が見つからない、あるいは売却代金において抵当権者の合意が得られないといったときには任意売却は不奏功となるため、抵当権者の競売申し立てを待つようになります。